ピロリ菌は除菌が必要です
最近ではあらゆる疾患に「ガイドライン」が設定されています。ガイドラインとは大まかに言うと「健康な方には、こういった検査や治療をすべき」という内容を定めたものです。
日本ヘリコバクター学会のガイドラインによると「除菌治療は、胃・十二指腸潰瘍の治療の他にも、胃がんなどのピロリ菌が影響する病気の予防や治療、感染経路の封鎖に有効であるため推奨する」とされています。
胃がんの発症を防ぐために除菌する
ピロリ菌除菌の最大の目的は胃がんの発症予防ですが、胃がん以外の疾患の予防のためにも極めて大切です。
ガイドラインで除菌が強く推奨されている疾患
- 胃潰瘍・十二指腸潰瘍
- 早期胃がんの内視鏡治療をした後
- ピロリ感染胃炎(鳥肌胃炎・萎縮性胃炎など)
- 胃過形成性ポリープ
- 機能性ディスペプシア
- 胃MALTリンパ腫
- 特発性血小板減少性紫斑病
- 鉄欠乏性貧血
- 胃食道逆流症(逆流性食道炎)
先進国では「子どもの頃の家庭内感染」が主要な感染経路だと考えられています。大事な家族に感染を広げないために、除菌治療を受けることが大切です。最近では、比較的容易に除菌治療を受けられるようになっています。
除菌せずに放っておいたことで、上記のような疾患を発症したり、家族に感染を広げたりするリスクがあるので、早めに除菌治療を受けましょう。
ピロリ菌の除菌方法
ピロリ菌はお薬の服用を1日2回、1週間継続することで除菌可能です。授乳中の方やアレルギーがある方などについては別のお薬を使うなど、それぞれに最適なお薬を選ぶことで、除菌の成功率が上がります。
1回目の除菌治療は「1次除菌療法」と言われています。1回目の除菌治療が失敗して実施する治療を「2次除菌療法」と呼びます。
ピロリ菌の除菌治療中に気を付けること
患者様より、飲酒と喫煙に関してご相談頂くことが非常に多いです。
喫煙についてですが、ガイドラインによると除菌薬を服用中は「禁煙」が推奨されています。なお、禁煙しても除菌の成功率が上がる訳ではないという研究データも存在します。当院ではガイドラインに則って禁煙をお勧めしております。
次に飲酒についてですが、「2次除菌療法」を受けている間は必ず禁酒してください。2次除菌で使うメトロニダゾールは、ジスルフィラム様作用(嫌酒薬)が起こるリスクが高いと考えられています。そのため、2次除菌中に飲酒すると、体内にアセトアルデヒドが通常以上に溜まり、酷い二日酔いと似たような嘔吐や頭痛、腹痛などの症状が現れます。
なお、1次除菌中も飲酒は控えて頂いた方が望ましいです。
ピロリ菌の除菌の副作用
副作用のリスクがないお薬は存在しません。除菌薬の服用による副作用については以下をご確認ください。
下痢・軟便 | 10-30% |
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味覚異常・舌炎・口内炎 | 5-15% |
皮疹 | 2-5% |
また、あまり起こるものではありませんが、おならの増加、腹痛、頭痛、便秘、めまい、肝機能障害などが起こる場合もあります。
治療をストップするような重い副作用(腹痛を伴う頻回の下痢、下血、発熱、咽頭浮腫、皮疹など)が生じる可能性は2~5%とそこまで高くありません。しかし、こうした副作用が起こった際は、すぐに服用をストップし、医師に相談してください。
なお、軽い副作用であれば、治療を終えると副作用も自然に治ることがほとんどなため、できるだけ服用を続けてください。
高齢者で副作用が起こる確率は約10%と言われています。そのため、重い持病を患っている方でなければ、高齢だからといって除菌治療を受けることを躊躇わなくても良いと思います。
ピロリ菌の除菌に必要な費用
保険診療の場合(胃カメラを実施してピロリ菌感染検査を受けてからお薬を処方する場合)は、除菌薬の処方時の診察費用は6000-7000円程度(3割負担)となります。
※ピロリ菌検査や胃カメラ検査の費用は別途発生します。
初診当日に全ての治療や検査を実施できる場合もあります。初診で胃カメラとピロリ菌検査を実施し、検査結果を基に除菌薬を処方する場合、自己負担費用はトータルで約5000円(3割負担)となります。
また、お薬の費用は薬局でお支払いください。お薬の費用の目安は約1000円(3割負担)です。
ピロリ菌の除菌後に気を付けること
除菌によって胃がんの発症を防げることは様々な研究でも明らかになっているため、間違いありません。しかし、除菌に成功したら絶対に胃がんを発症しないという訳ではないため、注意が必要です。除菌に成功しても、胃がんの発症リスクは3割減少する程度です。
除菌に成功してもこまめに内視鏡検査を受けること大切です。なお、バリウムによる胃がん検診と、胃カメラによる胃がん検診では、後者の方が胃がんの発見率が4倍高いと言われています。